■サンプル
注:サンプルは製作中のものですので、多少内容が変わる可能性がございます。
・タノ
「スーさんも体に気をつけて。…ノルウェーさんと仲良くしてくださいね」
スウェーデンが傷つくとわかっていながらそう言い捨ててロシアの家へ向かう。今度こそ足を止めない。
スウェーデンはフランスの圧力でフィンランドを売った。しかし、結局は戦勝国となりノルウェーを得たのだ。…デンマークからノルウェーを奪って、フィンランドを見捨てた形だ。勿論それはスウェーデン自身の意志ではないのだろう。彼の新しい上司は元々フランス人のくせ
に大のフランス嫌いでとても合理的な考えを選択しただけだ。スカンジナビア半島を統一しただけ。フィンランド人を捨てたなどとは微塵も思っていないだろう。しかし、フィンランド人はそう認識した。だからこそのさっきの言葉だ。これは僕から彼に伝えなければいけなかった言葉だ。フィンランドからスウェーデンへの未練と怨みをこめて。
・もんしろ
入り口で扉を開けたまま廊下の方を眺め、それから振り向いてこちらを見る。
「デンさん、来てたんですか?」
「ん」
フィンランドが部屋に入る。真っ直ぐにこちらに向かってきて、椅子に座る自分にほとんどぶつかるようにして横から抱きしめられた。
「フィン?」
「大丈夫ですか」
ぐ、と腕に力が込められる。少し痛い。
「何が」
「すれ違ったデンさんが、何だか変だったので」
いったいどんな様子をしていたのだろう。自分には想像する事ができなかった。